アストロスケールのELSA-d実証に関して

今年1月に実施したELSA-d(エルサディー)自律捕獲実証中に検知した異常に関して、その多くを解決または軽減することができました。しかし、捕獲機(サービサー)に搭載している8つのスラスタのうち4つに技術的な問題が発生し、これらは現在正常に機能しておりません。これにより、今回の実証で計画していた、模擬デブリ(クライアント)捕獲実証に影響が出ました。  

常に安全を最優先として掲げ、ELSA-dチームは自然に発生する大気抵抗等の摂動要素を踏まえた軌道力学を駆使しながら残存するスラスタを用いて複雑な噴射を行い、サービサーとクライアントの距離を、ミッション運用を継続できる距離にまで安全に戻しました。このプロセスは類を見ず非常に困難なものでしたが、今後の軌道上サービスミッションに必要となる、多くの知見を得ることができました。

上記状況を踏まえて、当社は近い将来に再度近距離における誘導接近の実証を計画しています。これは、サービサーをクライアントから160mの位置にまで移動し、サービサー搭載のLow power radio(LPR)センサによるクライアントの検出・追跡機能を検証することで、絶対航法から相対航法へ移行するというものです。成功すれば、当初予定されていたよりも困難な状況下で RPO(ランデブ・近傍運用)技術の一部分を実証したことになり、大きな進歩となります。その後はサービサーを安全な距離にまで遠ざけ、取得したデータの解析および今後の計画を立案予定です。

これらのELSA-d運用計画は、昨年8月25日に正常に完了した試験捕獲また今年1月に成功している自律相対軌道維持など、これまで達成してきた重要な実証結果に基づいたものです。この革新的ミッションにおける一連の実証を通じて、当社は宇宙での軌道上サービスに必要な経験や学びを得ています。持続可能な軌道環境の実現を牽引するにあたり、これらの知見を今後顧客へ提供するサービスやミッションに活かしてまいります。

これから実施するクライアントの検知・探索実証の最新情報は、可能な限り速やかにご共有いたします。