アストロスケール、大型デブリ除去等の技術実証を目指すJAXAの商業デブリ除去実証フェーズIIに選定

投稿日 2024年4月25日 投稿先ニュース

2024年2月より運用中のADRAS-Jミッションの知見も活かし、大型デブリの除去へ  

持続可能な宇宙環境を目指し、スペースデブリ(宇宙ごみ、以下、デブリ)除去を含む軌道上サービスに取り組む株式会社アストロスケールホールディングス(本社:東京都墨田区、創業者兼 CEO 岡田光信)の子会社で人工衛星システムの製造・開発・運用を担う株式会社アストロスケール(本社:東京都墨田区、代表取締役社長 加藤英毅、以下「アストロスケール」)はこの度、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が大型デブリ除去等の技術実証を目指し実施する商業デブリ除去実証(CRD2※1)のフェーズIIの契約相手方として選定されたことをお知らせいたします。

CRD2は、JAXAの進めるデブリ除去プログラムを起点に新しい宇宙事業を開拓し、日本企業が新たな市場を獲得することを目的としたプロジェクトであり、軌道上にある日本由来のロケット上段を対象に、二つのフェーズで大型デブリ除去の実証実現を目指すものです。フェーズIでは非協力物体※2であるデブリへの接近、近傍制御を行い、軌道上に長期間存在する情報の少ないデブリの運動や損傷・劣化がわかる画像データを取得。アストロスケールは2020年1月にCRD2のフェーズIの契約相手方として選定され、商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(アドラスジェイ、Active Debris Removal by Astroscale-Japan の略)」を開発。2024年2月よりミッションを実施しています。フェーズIIでは、フェーズⅠと同様にデブリへ接近、近傍制御し、さらなる画像データを取得するとともに、デブリ除去としてその捕獲や軌道離脱も行います。フェーズIIに関して、アストロスケールは2022年8月にフロントローディング技術検討の契約相手方の一社に選定されていました。今後、捕獲機構であるロボットアームを含め、フェーズIIで運用するADRAS-J2(Active Debris Removal by Astroscale-Japan2 の略)の開発を進めてまいります。

フェーズIIにおいては、アストロスケールが現在運用中のADRAS-Jミッションの知見が活かされます。ADRAS-Jは実際のデブリに対して安全な接近を行い、近距離でデブリの状況を調査する世界初※3の試みです。具体的には、大型デブリ(日本のロケット上段:全長約11m、直径約4m、重量約3トン)への接近・近傍運用を実証し、長期間軌道上に存在するデブリの運動や損傷・劣化状況の撮像を行います。2024年2月22日にデブリへの接近を開始して以降、遠距離からの接近や、搭載カメラによるデブリの捕捉、デブリの方角情報を用いる相対航法(AON※4)、そしてデブリの形や姿勢などの情報を用いる相対航法(MMN※5)の開始などに成功しています。2024年4月22日には、デブリの後方数百mの距離にまで接近に成功したことも発表しました。

これまでのADRAS-Jミッション運用実績

2月18日:Rocket LabのElectronロケットにより打上げ  

2月22日:デブリへの接近を開始  

4月9日:相対航法(AON)と近傍接近を開始  

4月16日:相対航法(MMN)を開始  

4月17日:デブリの後方数百mへの接近に成功

※1 CRD2:Commercial Removal of Debris Demonstrationの略称 ※2 非協力物体:接近や捕獲・ドッキング等を実施されるための能力・機器を有さない物体のこと ※3 過去に同様のミッションが実施されたか否かを自社で調査(2024年4月) ※4 AON:Angles-Only Navigationの略称。デブリの方角情報を用いる相対航法 ※5 MMN:Model Matching Navigationの略称。デブリの形や姿勢の情報を用いる相対航法

大型デブリ除去等の技術実証を目指す商業デブリ除去実証は、深刻化するデブリ問題を改善するデブリ除去技術の獲得と、日本企業の商業的活躍の後押しの二つを目的とする JAXAの新しい取り組みです。除去効果が大きい日本由来の大型デブリの除去を2段階で実施します。フェーズⅡでは、フェーズⅠと同様にデブリへの接近、近傍制御を行い、更なる映像を取得。そしてデブリを捕獲、降下させ、デブリ除去技術の軌道上実証を行います。フェーズⅠに続き、JAXAから技術アドバイス・試験設備供用・研究成果知財提供を受けて実施します。 商業デブリ除去実証ウェブサイト:https://www.kenkai.jaxa.jp/crd2/project/