アストロスケールとJAXA、衛星への燃料補給サービスに関するコンセプト共創活動を開始
株式会社アストロスケールホールディングス(本社:東京都墨田区、創業者兼CEO 岡田光信)の100%子会社である株式会社アストロスケール(代表取締役 伊藤美樹、以下「アストロスケール」)と国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(本社:東京都調布市、理事長:山川 宏、以下「JAXA」)は、この度、JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)」の枠組みのもと、「衛星への燃料補給サービス」に関するコンセプト共創活動を開始しました。
本活動は、宇宙の持続可能性(スペースサステナビリティ)の実現に向けて、約1年間にわたり、「衛星への燃料補給サービス」の事業コンセプトを共創するもので、軌道上での燃料補給を前提に開発された衛星だけでなく、そのような設計が施されていない衛星にも軌道上での燃料補給ができるミッションコンセプトを検討します。
アストロスケールは、デブリ除去技術実証衛星「ELSA-d(エルサディー、End-of-Life Services by Astroscale – demonstrationの略)」ミッションでの実証成果を補給対象衛星へのRPO※2(ランデブ・近傍運用)に応用するほか、開発を進めている宇宙船外汎用作業ロボットアーム・ハンド技術を燃料補給作業へ適用し、「衛星への燃料補給サービス」の事業性や海外拠点との国際連携を見据えた検討を実施します。 JAXAは軌道上での燃料補給システムや補給技術を評価するための地上試験装置の技術的実現性を検討し、将来研究に活用すると共に、それらを通じた技術的知見や技術アドバイスを提供します。
地球周回軌道は衛星やデブリの増加により混雑化が加速しており、このままでは長期的に軌道を利活用していくことは困難になると考えられています。この問題を解決し、スペースサステナビリティを実現するためには、使い捨てを前提とした衛星やロケット開発から脱却し、削減(reduce)、再利用(reuse)、修理(repair)、燃料補給(refuel)、除去(remove)といった循環型経済を宇宙空間で実現することが重要であり、そのソリューションが軌道上サービスです。
軌道上サービスの一つである燃料補給サービスは、衛星運用者にとっては、衛星の寿命を延長することで衛星機数や打上げ回数を低減するうえに、費用低減効果があり、新たな収益に繋がると予測※3されています。また、燃料の制約を取り払うことで、衛星1機ごとのミッションの範囲や柔軟性を拡大することも可能になります。
<アストロスケール 代表取締役 伊藤美樹のコメント> 軌道上サービスは、宇宙経済のインフラとして機能するものです。この数年で、軌道環境やスペースサステナビリティへの意識が急速に高まっており、その需要も大きく増加しています。寿命延長の機能の一つとして、燃料補給に関してJAXA様とともに取り組みを進められることを嬉しく思います。2030年までに、寿命延長を含む軌道上サービスを日常的な基盤インフラサービスにすることができるでしょう。
<JAXA 研究開発部門 第二研究ユニット長 杉田寛之のコメント> 軌道上での衛星への燃料補給は、燃料枯渇による寿命要因を克服し、より長期に渡って衛星運用を継続可能とする新しいサービスであり、今後、宇宙活動を変革するサービスに発展する可能性があると思います。JAXAの燃料補給技術の知見提供を通じて、民間による宇宙事業が前進し、持続可能な宇宙活動の実現に寄与することを期待しています。
1衛星にヒドラジン、酸化剤、キセノン、加圧ガスなどの推進剤を補給すること。化学反応を伴わない推進剤も含まれますが、一般的な用語として明確にするために、推進剤は燃料として記述されます。
JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)について
J-SPARC(JAXA Space Innovation through Partnership and Co-creation)は、宇宙ビジネスを目指す民間事業者等とJAXAとの対話から始まり、事業化に向けた双方のコミットメントを得て、共同で事業コンセプト検討や出口志向の技術開発・実証等を行い、新しい事業を創出する共創型研究開発プログラムです。2018年5月から始動し、これまでに約40のプロジェクト・活動を進め、民間事業者によるVR、食、教育、エンタメ、通信事業の事業化(商品化・サービスイン)を実現しています。事業コンセプト共創では、マーケットリサーチ、事業のコンセプトの検討などの活動を、事業共同実証では、事業化手前の共同フィージビリティスタディ、共同技術開発・実証などの活動を行います。https://aerospacebiz.jaxa.jp/solution/j-sparc/